下向きに咲く花が好き

こちらは、シャドーキルトの「リンネソウ」です。

キルトの額
リンネソウのシャドーキルト未公開バージョン

これもスウェーデンのスモーランド地方の花で、リネアといって、植物学者のカール・フォン・リンネの名前が由来です。

同じ対象でも長いこと考えて、いくつもパターンを作って、完成したものよりずっとたくさんの試作をしていました。
最後となった作品展に向けて準備をしている時に、どちらを展示しようかしらと、ふたつあるリンネソウの額を比べて悩んでいました。
好きな花で、どちらの作品もさりげなく仕上がっていて選び難かったようですが、結局わかりやすいかもねと、「続 私の針仕事ノート」(P.67)に載せた方を選んでいました。

でも、この写真のリンネソウの方がお気に入りだった気がします。
「ほら、花の縁にちょっと別のピンクの布やむら染めの糸を使ったり、茎の具合がいい感じでしょう…」と、うっとり語って、あの花の繊細さをよりいっそう表現できて満足しているようでした。
だからなんとなく公開しないで、下向きに静かに咲いている野原にそのままおいていたのかもしれません。

本にも書いてありますが、スウェーデンの山のトレッキングは、そんな静かな旅ではありませんでした。
強い日差しと冷たい風の中を“リンネの道”を辿ってひたすら歩き、ノルウェー側に渡るときは道を見失い、「誰にも見られていないよね?」と有刺鉄線の国境線をくぐり抜けて…。
笑いながら文句を言ってばかりの1995年の夏でした。

本と写真
「続 私の針仕事ノート」のリンネソウ掲載ページと1995年のトレッキングの写真

スウェーデン側に戻るときは、ちゃんと国境にかかる橋を渡りましたよ。

バイモとの再会

厳しい春となりましたが、みなさまいかがお過ごしでしょうか。

バイモ

杉本清美が生前、ブログによく登場させていていた小さな庭に、3年ぶりにバイモの花が一輪咲きました。
彼女の好きだったスウェーデンの野原で見かける、ウプサラ地方の花です。

つぼみを見つけた時は、とてもうれしくて、どうか無事に咲いてと願いました。
雨や風、時には雪も降るような激しい寒暖の差にも耐えてくれて、ようやく再会できたのです。

彼女が空へ旅立ってすぐの4月には、どんなときも先のことを考えて準備していた彼女らしく、ほんとうにたくさんの花を見せてくれました。
でもそれからは、ちゃんとお手入れもできず、さびしい庭となり、バイモの姿の見えない春が通り過ぎていきました。

ビオラ

でもようやく昨年末にビオラたちを植えることができ、小さな庭に明るい色が少し戻ってきました。

そんなある日、ずっとご無沙汰していた訪ね先で、久しぶりな訳を
「亡くなってからいろいろとあって、3年ほど経ちましてやっと来られました」と話したところ、
「そう、3年。気持ちも落ち着いてくるころね」と同じ春にご主人を亡くされたマダムから含みのある、時間の流れを感じる言葉をいただきました。

そんな私たちのこころを知ってか、空からのメッセージなのか、今年はバイモが咲いたのかもしれません。

この事態の終息にもまだまだ時間はかかると思いますが、何か種をまいたり、植えたり、チクチクして、いつか新しいつぼみを見つけられたらと祈っております。

彼女の残したブログを読むと明るい話ばかりだと感じます。おうちで過ごす時間に、よかったらご覧ください。

お知らせ

長らくサイトの更新をすることができずに失礼いたしました。

お知らせが遅くなりましたが、ぱんの木代表 杉本清美は病のため昨年3月に他界いたしました。

lei
自作のテッセンのディバイバイと親しい方々に作っていただいた大好きな黄色い花のレイをかけていきました

最後までアーティストとして新しいデザインを考え、布と糸と針とともにすごし、友人、生徒さん、家族、たくさんの方々に慕われ、好きなことを話しているときは病気であるなんてことは本人も忘れていたのではないかと思います。

昨年春からのたくさんの手続きを終わらせると、よりどころとなる人を失ってぽっかりあいた穴はより大きく感じられ、なかなかこうしたお知らせもできませんでした。いまもまだ落ち着いた感じはありませんが、このサイトを見てくださっている方にもきちんとお伝えしておかなければ、とようやく更新にいたりました。

杉本清美はもうこの世にはおりませんが、彼女の残した膨大な作品と、残る力をふりしぼって制作した本「続 わたしの針仕事ノート」は、長い間走り続けたアーティストの証としていまも息づいております。また、2004年より日々のできごとを綴った「ぱんの木ブログ」はココログより移してあります。お時間のあるときに読み返して偲んでいただければ幸いです。

何かを作ることやほかの人に何かをしてあげることが好きで、やるなら全力で、大切なことを笑顔で話しながらすごした彼女の時間を、これから少しずつ伝えてゆければと思います。

ぱんの木事務局

message
本人が生前にしたためておりましたメッセージをカードに仕立てて、おつきあいのあった方々にお送りしました

今回の作品展でみなさまに好評だったのは「アイヌ文様」でした

力強く北海道の大地に生き、家族の安全を願って、きびしい暮らしの中で愛情を込めて縫い上げたアイヌ文様に強く魅かれました。

旭川の川村カ子ト(かわむらかねと)アイヌ記念館や東京の日本民藝館などを訪れ資料を集め、私なりのアイヌ文様にまとめたものです。

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作品展 開催中です

「暮らしを彩る針しごと 杉本清美展」
会期:2016年12月1日(木)〜12日(月) 10:00〜19:00(最終日は16:00まで)
会場:京王プラザホテル 3階ロビーギャラリー
   東京都新宿区西新宿2-2-1
   Tel:03-3344-0111

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上下2フロアで展示しています。受付は上のフロアです。

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上のフロアの展示

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クリスマスの作品

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キット、小物、新刊書籍が購入いただけます。

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下のフロアの展示

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アイヌ文様の作品もあります。

この他に、ロビーのラウンジ横の壁にも展示があります。

作品展のお知らせ

12月に作品展を開催します。
先日出版しました「続 わたしの針しごとノート」のページを飾ったハワイアンキルトやティバイバイの実物をはじめ、クリスマスシーズンにぴったりの楽しい小物なども展示します。「続 わたしの針しごとノート」の販売もいたします。
ぜひお越しください。

暮らしを彩る針しごと 杉本清美展

「暮らしを彩る針しごと 杉本清美展」
会期:2016年12月1日(木)〜12日(月) 10:00〜19:00(最終日は16:00まで)
会場:京王プラザホテル 3階ロビーギャラリー
   東京都新宿区西新宿2-2-1
   Tel:03-3344-0111